海外FXトレーディングにおいて、最も一般的な取引プラットフォームは「MetaTrader」(メタトレーダー)であり、このプラットフォームには2つの主要なバージョンが存在します。
それらは、従来のMT4(MetaTrader 4)と、より最近開発されたMT5(MetaTrader 5)です。トレーダーが海外FXを行う際には、通常これらのうち一方を選択しますが、どちらを選ぶべきかについて迷うことも少なくありません。
この記事では、MT4とMT5の主要な違いを詳細に分析し、それぞれの特徴を明確に理解することで、トレーダーが自分の取引スタイルやニーズに最適なプラットフォームを選択できるよう案内します。
MT4とMT5の違いをわかりやすく比較
MetaTraderプラットフォームの2つの主要バージョン、MT4とMT5は、それぞれ異なる特徴と利点を持っています。
MT4は、有志によって開発された多種多様なインジケータやEA(エキスパートアドバイザー)が利用可能で、特に自動売買に優れていることで知られています。
一方で、MT5は進化した分析機能と多様な取引方法を提供し、さらに高速な実行能力を持っているため、スキャルピングやデイトレードといった裁量トレードに特に適しています。
MT4の特徴 | MT5の特徴 | |
---|---|---|
インターフェースの使いやすさ | やや使いにくい | より直感的で使いやすい |
モバイルアプリの機能 | チャート分割不可 | チャート分割可能 |
実行速度 | 標準的 | 高速 |
取引情報の表示 | 非表示 | 表示可能 |
コーディング言語 | MQL4使用 | MQL5使用 |
分析ツールの種類 | 基本的なものを提供 | 豊富な種類を提供 |
経済カレンダーの統合 | 無し | あり |
取引オプション | 5種類の注文方法 | 7種類の注文方法 |
標準インジケータ | 基本的 | 高度なものを含む |
カスタムインジケータとEA | 豊富 | 限定的 |
更新の頻度 | より少ない | 頻繁 |
サポートするブローカー | 多数 | やや限定的 |
取引板の詳細情報 | 提供されていない | 提供されている |
利用可能な時間足 | 9種類 | 21種類 |
ストラテジーテスター | 標準 | 高度 |
インターフェースの使いやすさ
MetaTraderプラットフォームの2つのバージョン、MT4とMT5は、インジケータやEA(エキスパートアドバイザー)の管理においても大きな違いを示しています。
MT4のナビゲーターウィンドウは縦長の表示で、多くの項目の中から特定のインジケータやEAを見つけるのが難しいというユーザーの声があります。
一方、MT5では、ナビゲーターウィンドウがカテゴリ別に整理されており、ユーザーは必要なツールを簡単かつ迅速に見つけることができます。
モバイルアプリの機能
MetaTrader 5(MT5)のAndroidアプリは、特に多様なチャート分析を行うトレーダーにとって革新的な機能を提供しています。
このアプリでは、スクリーンを2分割し、2つの異なるチャートを同時に表示することが可能です。これにより、例えばドル円とユーロ円のような異なる通貨ペアを並行して比較し、その相関性を利用したトレード戦略を展開することが容易になります。
一方、MetaTrader 4(MT4)のアプリでは、一度に1つのチャートしか表示できないため、MT5のこの機能はトレーダーにとって大きなメリットをもたらします。
MT5の画面分割機能は、効率的な取引戦略の立案と実行に不可欠で、特に相関分析を重視するトレーダーにとっては欠かせないツールです。
実行速度
MetaTraderのバージョン間での重要な違いの一つに、MT4とMT5の動作速度があります。MT4は、コンピュータのCPUの能力を限定的にしか利用できないため、動作が比較的重たく感じられることがあります。これに対し、MT5はマルチコアCPUの能力をフルに活用することが可能で、結果としてより高速でスムーズな動作を実現します。
この差異は、特に多数の通貨ペアのチャートを表示する際に顕著で、MT4では動作が遅くなることがありますが、MT5では高性能なコンピュータであればスムーズに動作します。これは、スキャルピングや短期トレードを行うトレーダーにとって非常に重要です。これらのトレーディングスタイルでは、注文から約定までのわずかな時間差が収益に直結するため、MT5の迅速な処理速度は大きなアドバンテージとなります。
取引情報の表示
MetaTrader 5(MT5)は、プライスボード機能によって、トレーダーに市場のダイナミクスを一目で把握する能力を提供します。
このプライスボードでは、ワンクリック注文ボタン、最新の気配値、スプレッド、直近の高値と安値、そしてスワップポイントが統合的に表示されます。これにより、全体的な市場動向を瞬時に理解し、迅速な取引判断が可能になります。
特に、売買の頻度が高いスキャルピングトレーダーにとって、この機能は非常に有用です。たとえば、主要な通貨ペアの中で特定のペアだけが異なる動きをしている場合、プライスボードを使ってその乖離を瞬時に捉え、すぐに反応することができます。
これは、市場の小さな変動を利用して利益を上げるスキャルピング戦略において特に重要なアドバンテージです。
コーディング言語
MetaTrader 4(MT4)とMetaTrader 5(MT5)は、それぞれ独自のプログラミング言語、MQL4とMQL5を使用しています。
これらの言語は名前が似ているものの、重要な点で互換性がありません。
このため、MT4で開発されたカスタムインジケータやEA(エキスパートアドバイザー)はMT5では動作せず、逆もまた然りです。
MT4が市場に登場してからの時間が長いため、MT5用のインジケータやEAの種類は比較的少ないのが現状です。
MQL4からMQL5への移行の難しさは、MT5用のカスタムインジケータやEAの普及を遅らせる一因となっています。
分析ツールの種類
MetaTrader 5(MT5)は、MetaTrader 4(MT4)に比べて、新しい描画ツールを追加することで、分析機能を強化しています。
MT4ではすでに多くの描画ツールが利用可能でしたが、MT5ではそれらに加えて、エリオット波の推進波や修正波、矢印線、長方形ラベルなどの新しいツールが使用できます。
経済カレンダーの統合
MetaTrader 5(MT5)は、トレーダーにとって重要な新機能を提供しています。それは、世界各国で発表される経済指標を直接プラットフォーム上で確認できる機能です。
MT5では、これらの経済指標がチャートの下部に表示され、直近の指標発表をトレーダーが容易に追跡できるようになりました。
この機能は、経済指標に対する直接的な関心がないトレーダーにも大きな価値を提供します。
経済指標の発表時には市場の値動きが激しくなることが多いため、多くのトレーダーはこれらの時期を意識して取引を行います。
経済指標の発表スケジュールをチャート上で直接確認できることは、市場の変動を予測し、より戦略的なトレードを行うための重要なツールとなります。
取引オプション
MetaTrader 4(MT4)はもともと、成行注文やBuy Limit(買い指値)、Sell Limit(売り指値)、Buy Stop(買い逆指値)、Sell Stop(売り逆指値)など5種類の注文方法を提供しています。
これに対して、MetaTrader 5(MT5)では、これらの注文方法に加えて、Buy Stop Limit(買いストップリミット)およびSell Stop Limit(売りストップリミット)の2種類が新たに追加され、トレーダーは合計7種類の注文方法を利用できるようになりました。
MT4の注文方法
- 成り行き – 現在の市場価格で即座に発注。
- Buy Limit(買い指値) – 現在価格よりも低い価格での買い注文設定。
- Sell Limit(売り指値) – 現在価格よりも高い価格での売り注文設定。
- Buy Stop(買い逆指値) – 現在価格よりも高い価格での買い注文設定。
- Sell Stop(売り逆指値) – 現在価格よりも低い価格での売り注文設定。
MT5で追加された注文方法
- Buy Stop Limit(買いストップリミット) – 指定した価格(現在価格より高い)に到達した時にのみ有効となる買い指値。
- Sell Stop Limit(売りストップリミット) – 指定した価格(現在価格より低い)に到達した時にのみ有効となる売り指値。
標準インジケータ
MetaTrader 5(MT5)は、トレーダーにとって重要な利点の一つとして、標準で提供されるインジケータの種類が豊富であることが挙げられます。
MT4も基本的なインジケータを備えていますが、より高度な分析を行いたいトレーダーには、MT5の拡張されたインジケータのセットが魅力的です。
例えば、移動平均線やボリンジャーバンドのような基本的なインジケータは、MT4とMT5のどちらにも備わっています。
したがって、これらの基本的なツールだけを使用するトレーダーにとっては、両プラットフォーム間の違いは大きな影響を与えないでしょう。
しかし、より複雑な市場分析や戦略を求めるトレーダーにとっては、MT5の提供する豊富なインジケータの範囲が大きな利点となります。
カスタムインジケータとEA
MetaTraderプラットフォームにおいて、MT4とMT5の間でカスタムインジケータやEA(エキスパートアドバイザー)の利用可能な種類には顕著な違いがあります。MT5用のインジケータやEAは着実に増加していますが、現状ではMT4のほうが有志によって開発されたカスタムインジケータやEAの選択肢が圧倒的に多いです。
EAや特定のトレーディング戦略に特化した機能を求めるトレーダーにとっては、MT4が適した選択肢となります。
一方で、EAやインジケータの自作に興味があり、最新のプログラミング言語に慣れることを目指すトレーダーには、MQL5の学習とMT5の使用が推奨されます。
MetaTraderの公式コミュニティサイト「MQL5.com」でのインジケータとEAの配信数を見ても、この違いは明らかで、MT4用のインジケータは9,221種類、EAは7,617種類に対し、MT5用はインジケータが5,112種類、EAが4,194種類となっています。
これらの数字は、各プラットフォームのカスタマイズオプションの豊富さを示しており、トレーダーの選択に大きく影響します。
更新の頻度
MetaQuotes社、MetaTraderの開発元は、MT4に対する開発姿勢を変えています。
2021年以降、MT4へのアップデートはほとんど行われておらず、2023年に至ってはわずか3回のアップデートに留まっています。
これは、MT4の開発に対する同社の消極的なスタンスを示しており、MT4の将来のアップデートやサポートについての疑問を投げかけています。
一方、MetaTrader 5(MT5)に対しては、MetaQuotes社は継続的かつ積極的に開発を行っています。
現在も頻繁にアップデートが実施されており、新機能の追加や既存の機能の改善が行われています。このことから、MT5への同社の強い開発コミットメントが明らかになっています。
サポートするブローカー
MetaTrader 4(MT4)は、海外FX業者の間で広く採用されており、その普及率は非常に高いです。一方で、MetaTrader 5(MT5)はまだすべての海外FX業者で採用されているわけではありません。
そのため、MT5を使用したいトレーダーは、選ぶ業者がMT5に対応しているかどうかを事前に確認する必要があります。
FX業者名 | MT4 | MT5 | その他 |
---|---|---|---|
XS.com | ◯ | ◯ | |
Iron FX | ◯ | × | アプリ |
FBS | ◯ | ◯ | |
AximTrade | ◯ | × | |
MYFX Markets | ◯ | ◯ | |
Axi | ◯ | × | |
HFM | ◯ | ◯ | アプリ |
iFOREX | × | × | 独自ツール |
Tradeview | ◯ | ◯ | cTrader |
AXIORY | ◯ | ◯ | cTrader |
IS6FX | ◯ | ◯ | |
easyMarkets | ◯ | ◯ | 独自ツール |
Exness | ◯ | ◯ | アプリ |
XMTrading | ◯ | ◯ | アプリ |
Vantage | ◯ | ◯ | アプリ |
BigBoss | ◯ | ◯ | CRYPTOS |
FXGT | ◯ | ◯ | |
ThreeTrader | ◯ | × | |
TradersTrust | ◯ | × | |
Titan FX | ◯ | ◯ | |
IC Markets | ◯ | ◯ | cTrader |
取引板の詳細情報
MetaTrader 5(MT5)は、取引プラットフォームの機能として取引板の表示を新たに導入しました。
この取引板は、各価格帯での買い注文と売り注文の状況を可視化し、市場のサポートやレジスタンスレベルを把握するのに非常に役立ちます。
特に、スキャルピングトレードを行うトレーダーにとっては、取引板の「厚み」を確認することで、意図せぬスリッページのリスクを避けることが可能です。
しかし、すべてのFX業者がこの取引板情報に対応しているわけではありません。
そのため、MT5を提供している業者であっても、必ずしも取引板を利用できるとは限りません。
利用可能な時間足
MetaTrader 4(MT4)では、9種類の時間足が利用可能でしたが、MetaTrader 5(MT5)では、MT4にはなかった12種類の時間足が追加され、合計21種類の時間足から選ぶことができるようになりました。
これにより、2分足、3分足、6分足などのより細かい時間足が利用できるため、トレーダーはより精密なチャート分析を行うことが可能です。
特に、短期トレンドの変化に敏感なスキャルピングトレーダーにとって、MT5の提供する2分足や5分足のような細かい時間足は、15分足や30分足では捉えきれない市場動向を分析する上で大きな利点となります。
MT4とMT5の搭載時間足一覧
時間足 | MT4で利用可能 | MT5で利用可能 |
---|---|---|
1分足 | ◯ | ◯ |
2分足 | ◯ | |
3分足 | ◯ | |
4分足 | ◯ | |
5分足 | ◯ | ◯ |
6分足 | ◯ | |
10分足 | ◯ | |
12分足 | ◯ | |
15分足 | ◯ | ◯ |
20分足 | ◯ | |
30分足 | ◯ | ◯ |
1時間足 | ◯ | ◯ |
2時間足 | ◯ | |
3時間足 | ◯ | |
4時間足 | ◯ | ◯ |
6時間足 | ◯ | |
8時間足 | ◯ | |
12時間足 | ◯ | |
日足 | ◯ | ◯ |
週足 | ◯ | ◯ |
月足 | ◯ | ◯ |
ただし、これらの時間足の追加はパソコン版のMT5に限られており、スマートフォンアプリ版のMT5では、MT4と同じ9種類の時間足が提供されています。
ストラテジーテスター
MetaTrader 5(MT5)における「ストラテジーテスター」の機能は、MT4から大幅な進化を遂げています。
MT4のストラテジーテスターでは一度に一つの通貨ペアのみを検証できましたが、MT5では複数の通貨ペアを同時にバックテストすることが可能です。
この改善により、トレーダーはEA(エキスパートアドバイザー)の検証をより効率的に行うことができるようになりました。
さらに、MT5のストラテジーテスターには、可視化機能、フォワード最適化、市場スキャンなどの新機能が追加されています。
これらの機能は、EAの性能評価と最適化をより詳細かつ包括的に行うための重要なツールとなっています。
MT4かMT5のどちらが優れているのか
MT4の方が自動売買の適正あり
自動売買システムの選択において、MetaTrader 4(MT4)は、豊富な有志開発のEA(エキスパートアドバイザー)の存在で一歩リードしています。
長年にわたる普及と共に、MT4用のEAは数多く開発され、広範な取引スタイルや戦略に対応しています。
一方、MetaTrader 5(MT5)の普及が進むにつれ、MT5用のEAも徐々に増加しています。
しかし、現時点ではMT4用のEAの数が圧倒的に多いのが実情です。
これは、自動売買を行うトレーダーにとって、MT4を選択する大きな理由の一つです。
ただし、今後自分でEAを開発することを計画している場合は、MT5のプログラミング言語であるMQL5を利用することが推奨されます。
裁量トレードはMT5
裁量トレードに焦点を当てているトレーダーには、MetaTrader 5(MT5)の使用を推奨します。MT5はMT4に比べて機能が充実しており、動作速度も速いため、裁量トレードにおいて優れたパフォーマンスを提供します。
MT5には、追加された多くの時間足、豊富な描画ツール、さまざまな注文方法などが装備されています。
これらの機能は、裁量トレーダーがより精密な市場分析を行い、効果的なトレード戦略を立てるのに役立ちます。
数年前まではMT5対応のFX業者が限られていましたが、最近はMT5の普及が進み、多くの人気海外FX業者でも利用可能になっています。
この普及により、トレーダーは以前よりも容易にMT5の高機能を活用できるようになり、MT5を選ぶ際の障壁が減少しています。
したがって、裁量トレードを行う場合には、基本的にMT5の方が優れた選択肢であると言えます。
チャート分析等はMT5が有利
チャート分析やテクニカル分析を重視するトレーダーには、より多機能なMetaTrader 5(MT5)の使用が推奨されます。
MT5は、MT4にはない様々な時間足、インジケータ、描画ツールを搭載しており、これによりトレーダーはより広範囲にわたる分析を行うことが可能です。
MT5の拡張された機能セットは、市場の動向をより深く理解し、精度の高いトレード戦略を立てるのに役立ちます。
特に、MT5に独自に用意された多様な分析ツールは、トレーダーが市場の複雑な側面を掘り下げ、より洗練された取引判断を下すのを支援します。
このため、テクニカル分析に重点を置く場合、MT5は優れた選択肢として際立っています。
MT4が向いている人とMT5が向いている人の違い
MetaTrader 4(MT4)とMetaTrader 5(MT5)は、異なる特性を持ち、それぞれ異なるニーズのトレーダーに適しています。
以下は、どんな人にそれぞれのプラットフォームが向いているかの概要です。
MT4が向いている人
- 自動売買重視のトレーダー
MT4には豊富なエキスパートアドバイザー(EA)が存在し、自動売買に特化しています。 - シンプルなプラットフォームを好むトレーダー
MT4は使いやすく直感的で、初心者にも扱いやすいです。 - 広範なカスタムインジケータやEAにアクセスしたいトレーダー
長年の普及により、MT4用の多様なカスタムツールが利用可能です。 - 既存のMT4コミュニティやリソースを活用したいトレーダー
MT4は長い歴史を持ち、多くのコミュニティサポートがあります。
MT5が向いている人
- 高度なチャート分析を求めるトレーダー
MT5は複数の時間足、改善された描画ツール、先進的なインジケータを提供します。 - 複数の市場を取引したいトレーダー
MT5は株式、先物など、FX以外の市場にも対応しています。 - スピードと性能を重視するトレーダー
MT5はマルチスレッディング、マルチコアサポートにより、高速な処理能力を持っています。 - 将来性を重視し、最新技術に適応したいトレーダー
MT5は継続的に更新され、最新の取引技術に対応しています。
最終的に、選択はトレーダーの個々の取引スタイル、ニーズ、経験レベルに依存します。それぞれのプラットフォームの特徴を理解し、自分の取引目的に最適なものを選ぶことが重要です。
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